ブリームの死と渡辺範彦氏の思い出

8月14日、ジュリアン ブリームが亡くなった。1933年イギリス生まれのクラシックギタリストで、彼が活躍した当時、多少独りよがり的な感のあったギター音楽の世界に一段階上の、普遍的な価値をもたらした(私的な感想です)音楽家だと思う。リュートなども演奏しルネッサンス以前の音楽にも造詣が深かった。惜しむらくはたまに指がついて行かなくなることだった。

ブリームと言えば僕にとっての一番の思い出は、たしか1981年ごろ、当時ギターを師事していた渡辺範彦氏に誘われて一緒に、ブリームの来日公演に行ったことだ。会場は何処だったか忘れたけど山手線の内側だったと記憶している(市ヶ谷ルーテルだったかな)渡辺氏がエントランスをくぐり入ってゆくと、ロビーで開演を待っていたほとんどの人の視線が渡辺氏に集った。氏のとなりにいる僕もなんだか有名人になったみたいで面白かった(笑)コンサートが終わったあと渡辺氏は「(ブリームがその夜リュートも弾いたことに言及し)私たちのような凡人はギターに専念するべきでリュートなんかに手を出しちゃいけません」とおっしゃった。渡辺氏も天才なのだがいつも謙虚な人だった。当時リュートもやりたいなぁと思っていた僕には、すこし残念な言葉だった。氏の言葉を律儀に守ったわけではないが、結局今に至るまでリュートには手を出せずにいるがすこし後悔している。そんな渡辺氏もすでに他界されており、なんだか当時のことが夢のようになっていく。

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