ぺリュリュー沖縄戦記(読書感想)
本書は第二次世界大戦中アメリカ海兵隊の兵士として太平洋の島々で旧日本軍と戦ったユージン スレッジの体験をまとめたものである。
480ページにわたる大作であるが、特に興味深かったのは2点、最初はぺリュリュー島での戦いだ。この島は、珊瑚の堆積によってできた島なので、地面が硬くおびただしい数の遺体を埋める穴を掘ることができず、地表で腐敗したため、狭い島内には猛烈な腐敗臭で覆われた。そのためアメリカ兵は食事をとることができず、食料は豊富だったにもかかわらず、栄養失調になる兵士が続出した、とのくだりだ。あまりの凄惨さに絶句する。
次は沖縄。彼らが上陸したとき沖縄は雨季だった。地面はぬかるみ、戦死者は泥の中に埋まった。そこに日本軍の迫撃砲が着弾すると腐敗した遺体が四方に飛び散り、周囲の兵士に降り注いだ。これはもはや狂気でしかない。
このような凄惨な体験を重ねるにつれて、はじめは正義感に突き動かされ志願兵となった著者が(極めて裕福な家庭出身の著者は兵役を回避することもできた)次第に日本人に憎悪を抱き始め、捕虜を虐待するまでになる過程に震える。
戦場での過酷な体験をした著者は帰国後、無気力になり社会復帰まで時間を要する。
この本は「パシフィック」というタイトルでドラマ化されてAmazon primeで見ることができる。
戦争というものの残酷さは地球規模の災厄であるとともに、個人の内面をも徹底的に破壊してゆくものである、と言うさまがよく描かれている秀作である。